産後うつ病

産後うつは赤ちゃんを産んだばかりの女性に現れる病状です。ホルモンの変化や睡眠不足、環境の変化や育児のストレス・プレッシャーなど様々な原因で引き起こされ、およそ5〜10%(産婦人科診療ガイドラインより)の産後の女性が鬱を発症すると言われています。 


ホルモンの影響やストレスから強い抑うつ症状に

産後はストレスが多い上に、周囲のサポートが不十分な状況が重なっている場合が考えられます。しかも妊娠・出産に伴う女性ホルモンの大きな変化によって、ストレスに耐える抵抗力が低下します。その結果ストレスを処理しきれなくなった脳が機能不全を起こし、ものごとを悪くとらえる傾向が強く出てしまいます。
そのような状態になると「母親ならば、あれもこれもやらねばならない」と考え、ますます無理をしたり、「育児の責任は私にある」と一人で抱え込んでしまったりと、悪循環となってしまいます。こういった悪循環こそが産後うつ病なのです。
また、産後うつ病の発症には、妊娠中の望まないイベントや、妊娠中のうつ状態および不安状態との間に関連があることも報告されています。
具体的な症状は気分の落ち込みや興味、喜びの喪失、不安、焦燥感、体重減少・増加、食欲減退・増加、不眠などが挙げられます。 「産後鬱かもしれない」と感じたら、下記のセルフチェックで確認し適切な対処をおこなうようにしましょう。

産後うつのセルフチェック

 ✔ 気持ちが落ち込みやすくなった
 ✔ 意欲がわかない
 ✔ 人に会いたくない
 ✔ 家事や育児に集中できない
 ✔ 身を整えることに無関心になっている
 ✔ 疲れやすい
 ✔ 集中力がなくなった
 ✔ 自分の赤ちゃんに愛情を感じられない
 ✔ 産前に興味があったことに無関心になった

上記の項目に該当する数が多いほど、産後うつの可能性が高くなります。症状が2週間以上の長期間続くようであれば、産後うつの対策や治療を行うことをおすすめします。
EPDS(エジンバラ産後うつ病質問票)を用いたスクリーニングも推奨されています。

マタニティブルーと産後うつの違い

マタニティブルーは、産後3~5日目をピークに産後2週間以内に現れる症状です。出産によるホルモンバランスの影響によるもので、一時的に気分が塞ぎ情緒不安定になりますが、産後1~2週間で精神的にも落ち着いてきます。一方2週間以上抑うつ状態が続く場合は、産後うつを発症している可能性があります。

対処方法や予防策

産後うつは産後1か月頃から発症し、少しずつ悪化していきます。本人が産後うつを発症していることが気づかず症状が進行することも多いため、一人で育児を抱え込まずに、相談したり手伝ってもらったりする姿勢が大切と言えます。パートナーが忙しくて育児に参加できない場合には、行政の窓口に相談したり、支援サービスを利用したりする等の対策をとるように心がけてください。
自分でできる対策としては、以下に挙げた項目を意識して試してみるとよいでしょう。

 ✔ できるだけ多く休息や睡眠を取る(赤ちゃんと一緒に寝る等)
 ✔ 全てを完璧にしようと思わない
 ✔ 自分の気持ちを周囲の人に話す
 ✔ 家族や友人・他のお母さんと話す
 ✔ 一人の時間を設ける
 ✔ 外出や日光浴をできる範囲で積極的に行う
 ✔ 栄養バランスに気を付けて食事を摂る

産後うつは、身体が休めと言っているサインとも言えます。まずは十分な休息をとるようにしましょう。また症状が改善されない場合には、出産した産婦人科や心療内科等を受診するようにしてください。